利用者さんのお宅の階段を上っている途中で、自分の息が上がっていることに気づきました。
仕事でうかがっている先の、なんてことのない階段です。誰かの体をよくするために通っている場所で、自分の体力のなさに気づく。少し情けない気持ちになりました。
思い当たることは他にもありました。食材の買い出しから帰ってくると、荷物を置いたあと一度座らないと、次の家事に移れない。20代のころは、そのまま夕飯の支度をしていたはずなのに。
「運動不足だな」とは思うんです。でも、ジムに通う時間もお金も、今の生活には見当たりませんでした。
そこで私が最初に見直したのは、運動ではなく毎日している3つの動作でした。理学療法士として働きながら、訪問の現場で年齢を重ねた体の変化を見てきた経験から、まずここを確かめようと思ったんです。

器具も、月謝も、新しく作る時間もいらないよ。読み終わる頃には、今日から試せることが1つ見つかっているはずだから、ぜひ最後まで読んで実践してみてね!
「体力が落ちた」と最初に感じたのは、運動中じゃなかった
振り返ってみると、体力の低下に気づくのは、たいてい運動している最中ではありません。
- 階段の途中で一度足を止めたとき
- しゃがんで物を取ったあと、無意識に手をついて立ち上がったとき
- 子どもや荷物を抱え上げて、あとから腰にきたとき
なんてことのない日常の場面で、ふと気づくんです。
そして「何かしなきゃ」と思うものの、何から始めればいいのか分からない。そのまま時間だけが過ぎる。これ、私だけではないと思います。
20代と同じことをしているのに、あとに残る
もうひとつ気になっていたのが、あとに残る感じでした。
同じ距離を歩いて、同じ量の荷物を持っているのに、家に着いてからの回復に時間がかかる。買い出しのあとに一度座り込んでしまうのは、まさにこれでした。
仕事柄いろいろな年代の方の体を見ていて感じるのは、筋肉の量そのものより先に、動作の「やり方」のほうが変わっていることが多い、ということです。楽な動かし方に、少しずつ寄っていく。
私自身がまさにそうなっていました。
そもそも「体力」は、ひとつの力ではない
ここで少しだけ、仕事の話をさせてください。
「体力」という言葉、私たちは一括りに使いますが、中身はいくつかの要素に分かれています。よく使われる整理として2つに分けられます。
- 動くための力(筋力、持久力、バランス、柔軟性など)
- 体を守る力(体温調節や、ストレス・疲労への耐性など)
つまり「体力が落ちた」と一言で言っても、何が落ちているかは人によって違うんです。
私の場合で言えば、階段で息が上がるのは持久力寄りの話。買い出しのあとに回復が遅いのは、疲れへの耐性のほう。そして、しゃがんだあと手をついて立つのは、筋力やバランスの話です。
ここが大事なのですが、日常の動作では、これらがバラバラに使われているわけではありません。
階段を一段上がる。この動作ひとつをとっても、息を切らさずに上り続ける持久力と、片脚に体重を乗せて体を押し上げる筋力と、その一瞬ぐらつかないバランスが、同時に使われています。
だから私は、「持久力を鍛えるために走ろう」と考える前に、その全部が一度に使われている日常の動作のほうを見ることにしました。
(※体力の分け方は、目的や分野によって細かい定義が変わります。ここでは私が仕事の中で使っている整理のしかたとして書いています。)
なぜ「運動を足す」から始めると続かないのか
体力が落ちたと感じた人が最初にやることは、たいてい「運動を足す」です。私もそう考えました。
でも、忙しい30代にとって新しい時間をつくることが、いちばん難しいんですよね。
それに、こう考えてみてください。
がんばって運動を始めたとして、できるのは週に2回か3回。一方で、椅子から立ち上がる動作は、1日に何十回もやっています。階段も、床からの立ち座りも同じです。
回数でいえば、圧倒的に後者なんです。
だとしたら、まだ確保できていない週2回の質を上げるより、すでに毎日やっている数十回の質を上げるほうが、少なくとも私には現実的でした。
(続けるための仕組みづくりについては、別の記事に書いています。)
理学療法士の私が真っ先に見る3つの動作
現場で人の体を見るとき、私がまず確認するのは筋肉の量ではありません。日常の動作をどうやっているかです。
これは年齢に関係なく、自分でも確かめられます。私が自分に対してチェックしているのも、この3つです。
① 椅子から立ち上がるとき、手をついていないか
まずこれです。
ひじ掛けや太もも、テーブルに手をついて立っていないでしょうか。無意識にやっていることが多いので、次に立つときに意識してみてください。
手を使わずに立てるかどうか。 これが最初の確認ポイントです。
コツは、立つ前に足を少し手前に引いて、お辞儀をするように上半身を前に倒すこと。頭が足の上あたりに来てから立つと、脚に体重が乗ります。反動をつけて「よいしょ」と勢いで立つのとは、使っている場所が違います。
手をつく癖がつくと、そのぶん脚を使う回数が毎日少しずつ減っていきます。1日に何十回もある動作なので、その差は小さくないと感じています。

② 階段を上るとき、体が前に倒れていないか
私が息を切らしていた階段です。
上半身が前に突っ込むような上り方になっていると、脚で押し上げるというより、勢いで上っている状態になりやすいです。
意識しているのは、前に出した足にしっかり体重を乗せてから、次の一段に進むこと。ゆっくりで構いません。一段ずつ、乗せてから上る。
手すりはあれば使ってください。危ないと感じたときは、我慢せず必ず使います。ここは無理をするところではありません。

③ 床から立ち上がるとき、どこに手をつくか
床に座った状態から立ち上がる動作は、日常の中でもかなり負担の大きい動作のひとつです。
ここでおすすめしたいのが、片膝立ちを経由すること。両手を床について体をひねりながら起き上がるより、片方の膝を立てて、その足に体重を預けて立つほうが、体をねじらずに済みます。
※腰やひざに痛みがあるときは、この確認はやらないでください。痛みを我慢して動作を変えることに、いいことは何もありません。

3つに共通していること
どれも「今より少しだけ、脚に仕事をさせる」だけです。
新しく時間をつくる必要がありません。 すでに毎日やっている動作の、やり方を変えるだけです。
これが「お金をかけない健康改善」になる理由
器具もいりません。月謝もいりません。何かを買う必要もありません。
そして何より、続けようと意識しなくても回数が積み上がっていく。椅子から立つのをやめる日はありませんから。
健康のために何かを買おうか迷っているなら、その前にここを見直してみても損はないと思います。少なくとも私は、ここから始めてよかったと感じています。
そのうえで、体を動かしたくなったら
不思議なもので、動作を意識するようになると、そのうち「もう少し何かやってみようかな」と思う日が来ます。
そう思えてからで、十分間に合います。
家でできる運動については、こちらに書きました。回数より先に整えたいことの話です。
今日からできる、ひとつだけ
次に椅子から立つとき、手をつかずに立ってみてください。
それだけです。
できなかったとしても、それが今の状態というだけの話なので大丈夫。私も最初、意識していないときは普通に手をついていました。

自分の状態を知った上で、1日に何回椅子から立っているかを数えてみてね。
たぶん、思っているよりずっと多いはず。
その回数分のチャンスが、毎日あるということなんだ!
まとめ
「体力が落ちた」と感じたとき、いきなり運動を足さなくても大丈夫です。
- 椅子から立つとき、手をつかない
- 階段は、前の足に乗せてから上る
- 床からは、片膝立ちを経由して立つ
毎日している動作のやり方を変えるほうが、回数の面でずっと効率がいい。これが、階段で息を切らした私がたどり着いた答えでした。
慣れてない何かを新しく始める必要はない、というのは思っていたより気楽です。
※本記事は個人の体験・感想をもとにした情報提供が目的です。 ※感じ方や体の状態には個人差があります。 ※医療行為・診断・治療を目的とするものではありません。 ※痛みやしびれがあるとき、持病のある方、治療中の方は 必ず医師にご相談ください。


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